声にできない“アイシテル”
「かなり苦労はしたよ。
 そりゃもう、あの手この手を駆使してね。
 でも、チカを迎えに行くためには彼とのつながりが必要だったからな」


 俺が苦笑を浮かべると、横山は穏やかに微笑んだ。

「これだけの準備が整っていれば、専務が抜けても業務に支障はないでしょう」

「当然だろ。
 そのためにこれまで頑張ってきたんだ」

「そうでしたね。
 それで、出発はいつにしますか?」

 横山は飛行機の空席状況をネットで調べている。


「出来るだけ早くがいい」

「そうしますと・・・。
 明日の午前10時の便に空きがありますね」

 ポン、と決定ボタンを押しチケット番号をメモする。

「こちらの番号を空港の受付カウンターに伝えてください」

「分かった」


 俺達はイスから立ち上がる。

「専務とチカさんが無事に再会できることを祈ってます。
 では、失礼いたします」


 横山は俺と握手を交わし、会議室を出て行った。


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