声にできない“アイシテル”

騒がしい夕暮れ SIDE:チカ

―――えっ?

 くるっと後ろを向いた。


 住んでいる町から電車で2時間行ったところにある美術館に出かけていた私。


 駅へと向っていると誰かに呼ばれたような気がして。

 振り返ってみたけれど、そこに見知った顔はない。


―――気のせいか。

 私はバッグを持ち直して歩き出す。


 
 今日で留学して2年。


 日本人とは感性の違う世界。

 吸収することが多くて、夢中で勉強した。


 そんな毎日を送る中。

 どんなに忙しくても。

 どんなに疲れていても。


 アキ君を思い出さない日はなかった。


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