声にできない“アイシテル”
 自分の席で頬杖をついてぼんやりしていると、担任が入ってくる。

「今日のLHRは各自参加する競技を決めてくれ。
 はい、男女分かれて」

 担任の指示で男子が窓側、女子が廊下側に集まった。


「桜井、何に出る?」

「お前、足が速そうだからリレーに出ろよ」

「3年のクラス対抗は運動会の締めだからな。
 盛り上がるぜ?」

 相変わらず女子とは距離を置いて接しているけど、男子とはすっかり打ち解けた。 

 まだ2週間しか経っていないのに、まるで4月から一緒にいるかのように仲がいい。


「リレーか・・・」


 確かに足には自信があるけど、目立ちたくない。

「俺、綱引きでいいよ」

 団体種目だったら、そんなに目立たないだろうし。


「桜井は綱引き?
 ん、分かった」

 級長の滝沢がエントリー表に名前を記入する。

「本競技はそれでいいから、リレーの補欠をやってくれないか?」

「え?」



 俺の顔が渋る。


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