声にできない“アイシテル”
―――何、これ?!


 私がテレビに釘付けになっていると、裕子さんが話し始めた。

「自爆テロだって。
 犯人はもちろん、ほとんどの乗客が亡くなったみたい」


 鉄で出来たバスがところどころ歪むほどの爆発。

 助かるなんて、そうありえない。


「いつもよりチカちゃんの帰りが遅かったから、巻き込まれたかと思って心配してたのよ」


 私はペコリと頭を下げる。

 そして手に持っていた荷物を軽く持ち上げた。


「そっか。
 買い物をしていて遅くなったのね?」


 時間は6時を過ぎていて、いつもならとっくに夕飯時だ。


 だけど、こんな映像を見てしまったら食事をする気分になれない。

 それは裕子さんも同じみたい。


「現場に行ってみようか?
 何か出来ることがあるかもしれないし」

 彼女の提案にうなずいた。




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