声にできない“アイシテル”
 だけど、お兄ちゃんは簡単にはだまされてくれなかった。

「理由はそれだけ?」
 

 ぎこちなく笑う私に、お兄ちゃんは何か気付いたのかもしれない。


 でも、すっと視線をそらした私にそれ以上は訊いてこなかった。




「まぁね。
 チカちゃんももう立派な大人なんだし。
 考えがあっての行動だろうから、追求はしないよ」


“・・・そうしてもらえると助かる”


「だけど、家の人にまで内緒ってことはないよねぇ?」


 お兄ちゃんは笑いながら冗談ぽく言ったのに、私の肩はビクリとはねてしまった。







「本当に内緒なの?!」

 ギョッと驚くお兄ちゃん。


 バレてしまってはごまかしようがない。

 私はうなずくしかなかった。



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