声にできない“アイシテル”
「・・・分かったよ」

 やれやれと息を吐きながら、お兄ちゃんが言う。

“ごめんね。
 無茶なこと頼んで”

 頭を下げる私。


「いいよ。
 その代わり、俺にだけ住んでいるところを教えてくれ。
 チカちゃんの家族にも知らせないと約束するから」


 私はポケットからメモとペンを取り出し、サラサラと書き付ける。

「学会が開かれている間は滞在してるから。
 そのうち一緒に食事に行こう」

 メモを受け取りながら、お兄ちゃんが言う。


“うん”

「じゃ、おやすみ」

“おやすみなさい”


 私は手を振って、その場をあとにした。




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