声にできない“アイシテル”
 次の日。

 裕子さんはまだ帰ってきてないので、一人で朝ごはんを食べている。


 そこに呼び鈴が鳴る。


―――誰だろ?


 急いで玄関に向うと、トオルお兄ちゃんだった。


「おはよう」

“どうしたの?”


 昨日、食事に行く約束はしたけど。

 今からってことはないよね?



 お兄ちゃんはなんだか複雑な顔をしていた。

「一緒に来てもらい所があるんだ。
 いい?」

 言いづらそうに、遠慮がちに告げてくる。

―――来てもらい所?
   

“いいけど・・・。
 10分だけ待ってて” 


 私は部屋に戻り、大急ぎで出かける支度を始めた。



< 369 / 558 >

この作品をシェア

pagetop