声にできない“アイシテル”
「彼の所持品は爆発で飛ばされて、身元を証明するものがなくて困ってたんだ。
 チカちゃんおかげではっきりしたよ。
 これで日本大使館に連絡とって、帰国手続きが進められる」

 お兄ちゃんは私から聞いたアキ君の住所や勤務先を手帳に書きとめている。


 ふと顔を上げて、私を見た。

「さっき、逃げようとしてたよね。
 どうして?」

“それは・・・”

 視線をさまよわせ、一瞬戸惑う。


―――隠し通せないか・・・。

 勘のいいお兄ちゃんのことだから、きっと遅かれ早かれ気付くだろう。


 だから、自分の口から言った。

“・・・私達、別れたの”


「え?」
 
 お兄ちゃんの手が止まる。

「それ、本当?」


“ん・・・、別れたって言うか・・・。
 私の一方的な都合、かな。
 だから彼と顔を合わせづらくて・・・”
  

 私は視線を床に落とした。


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