声にできない“アイシテル”
お兄ちゃんは鼻の頭を指でかきながら、困ったように話を続ける。
「桜井さんは重度の記憶障害でね。
自分の名前すら思い出せない状態なんだ。
だけど、イギリスに何かを見つけに来たことだけは覚えてるんだって」
―――何かって、何?
私はひざの上で、手をぎゅっと握る。
―――アキ君は、何を見つけようとしていたの?
彼が私にもう一度会いたいって事は、少なくても、私のことを憎んでいないということではないのか?
―――アキ君・・・。
嬉しくて飛び上がってしまいそうだ。
だけど。
同時に、頭の奥で『期待するな』と言う声がする。
彼の信頼と愛情を裏切った私。
―――そうだよ。
そんな都合のいい話、あるはずないもの。
なのに、お兄ちゃんから聞かされた内容は、私の心を簡単に舞い上がらせる。
「それが物なのか、場所なのか、人なのか。
はっきりとは分からないらしい。
でも、“あの女性が関係していることは間違いないから”って」
1度言葉を区切ったお兄ちゃんが、私の目を見て言った。
「“今の自分にあの女性が必要だから”って。
土下座までして、必死で俺に頼んできたんだ」
「桜井さんは重度の記憶障害でね。
自分の名前すら思い出せない状態なんだ。
だけど、イギリスに何かを見つけに来たことだけは覚えてるんだって」
―――何かって、何?
私はひざの上で、手をぎゅっと握る。
―――アキ君は、何を見つけようとしていたの?
彼が私にもう一度会いたいって事は、少なくても、私のことを憎んでいないということではないのか?
―――アキ君・・・。
嬉しくて飛び上がってしまいそうだ。
だけど。
同時に、頭の奥で『期待するな』と言う声がする。
彼の信頼と愛情を裏切った私。
―――そうだよ。
そんな都合のいい話、あるはずないもの。
なのに、お兄ちゃんから聞かされた内容は、私の心を簡単に舞い上がらせる。
「それが物なのか、場所なのか、人なのか。
はっきりとは分からないらしい。
でも、“あの女性が関係していることは間違いないから”って」
1度言葉を区切ったお兄ちゃんが、私の目を見て言った。
「“今の自分にあの女性が必要だから”って。
土下座までして、必死で俺に頼んできたんだ」