声にできない“アイシテル”
そんな私の心中を察したのか、お兄ちゃんが優しく微笑む。
「チカちゃんは心配してるみたいだけど。
記憶喪失はきっかけがあったからといって、簡単に回復するわけではないんだよ。
そんなの、ドラマや映画の中でしか起こらない」
“え、そうなの?”
「桜井さんの場合はそうなんだ。
記憶と記憶をつなぐ組織が壊死をして、完全に機能していない。
代わりの組織を移植すればすぐに記憶は戻るよ。
けど、移植しなければ変わらないって事」
“本当に?”
私は思わずお兄ちゃんへと身を乗り出す。
「うん。
自然治癒で記憶が戻ったという前例は、これまでに聞いたことがないな」
難しい顔でお兄ちゃんが言った。
―――移植手術をしなければ、アキ君は記憶喪失のまま。
私のことを“大野 チカ”だと認識できない彼となら、一緒にいても問題ないかもしれないけど・・・。
「その手術はここでは出来なくってね。
専用設備のある日本の◇◇病院でしか行えない。
チカちゃん、どうする?」
私は考え込む。
―――今のアキ君は、言ってみればまったくの別人なんだよね・・・。
それなら、叔母様との約束を破ったことにならないだろうか。
アキ君が日本に戻るまで、一緒にいることが許されるだろうか。
「チカちゃんは心配してるみたいだけど。
記憶喪失はきっかけがあったからといって、簡単に回復するわけではないんだよ。
そんなの、ドラマや映画の中でしか起こらない」
“え、そうなの?”
「桜井さんの場合はそうなんだ。
記憶と記憶をつなぐ組織が壊死をして、完全に機能していない。
代わりの組織を移植すればすぐに記憶は戻るよ。
けど、移植しなければ変わらないって事」
“本当に?”
私は思わずお兄ちゃんへと身を乗り出す。
「うん。
自然治癒で記憶が戻ったという前例は、これまでに聞いたことがないな」
難しい顔でお兄ちゃんが言った。
―――移植手術をしなければ、アキ君は記憶喪失のまま。
私のことを“大野 チカ”だと認識できない彼となら、一緒にいても問題ないかもしれないけど・・・。
「その手術はここでは出来なくってね。
専用設備のある日本の◇◇病院でしか行えない。
チカちゃん、どうする?」
私は考え込む。
―――今のアキ君は、言ってみればまったくの別人なんだよね・・・。
それなら、叔母様との約束を破ったことにならないだろうか。
アキ君が日本に戻るまで、一緒にいることが許されるだろうか。