声にできない“アイシテル”
「おせっかいなのかもしれないけど。
 チカちゃんの顔を見ていたら、本当は桜井さんのそばにいたかったんだろうなって思えてさ。
 だから、ひと時でも彼と一緒の時間を過ごさせてあげたいなって」

“お兄ちゃん・・・”

「まぁ。
 そうはいっても、覚悟を決めて日本を離れたチカちゃんに彼と会わせるのは悪い気もするし・・・」


 お兄ちゃんは“医者として患者の望みをかなえてあげたい”という思いと。

“幼馴染の私を苦しめたくない”という思いにはさまれて。

 はっきりと言えないでいる。


「選択はチカちゃんに任せる。
 桜井さんに会わないことになっても、誰も君を恨まないよ」

“うん・・・”


 私は迷っていた。


 本音はアキ君のそばにいたい。

 だけど、2年間の想いが爆発してしまうのがとてつもなく怖い。


 ようやく彼のことは想い出に出来そうだったのに・・・。



 地面に視線を落とし、じっと考える。


 迷って、悩んで。


 私は心を決めた。


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