声にできない“アイシテル”
 大きく息を吸い込んで、顔を上げる。

“アキ君に会ってもいいよ”


 もう一度彼に会って、自分の気持ちを整理しよう。

 そして今度こそ、自分の口からアキ君にお別れを言おう。


 今のアキ君は私の彼だった人物じゃないけど。

 それでも、さよならを告げることができたら、自分の気持ちにケリがつく。


 そうすれば、彼への想いは素敵な想い出になるはず。




「それでいいの?」

 なんとも言えない表情のお兄ちゃん。


“もう!
 自分から話を切り出しておいて、今更迷わないでよ!”

 私はお兄ちゃんの肩をポン、とたたく。

“大丈夫・・・とは言い切れないけど。
 けじめをつけるチャンスだと思うの”


 いまだに彼を吹っ切れない私の為に、きっと神様が会わせてくれたんだ。
 
 きちんとお別れできなかった私に与えられた再会。



「そうか・・・」

 お兄ちゃんが私の頭をそっとなでる。

「くれぐれも無理しないで。
 何かあったら、すぐ俺に言うんだよ」

“うん”

 私は小さく笑った。
< 383 / 558 >

この作品をシェア

pagetop