声にできない“アイシテル”
 私の心臓がトクン、小さく跳ねる。

―――だ、だめ。
  『会いたい』と言われても、この人は私の知ってるアキ君とは違うんだから!


 こんなことでいちいち勘違いしていたら、身が持たない。

 思わず嬉しくなってしまった自分を戒めた。




“それでしたら、とりあえず何かお話でもしましょうか?”

「そうですね」

 私とアキ君は部屋の隅に置かれたイスへと移動する。


「チカちゃん。
 俺、大使館に行ってくるよ」

“うん、気をつけてね”

「分かった。
 ・・・あ」


 扉に向ったお兄ちゃんが、戻ってきた。

「・・・本当に彼といていいの?
 つらくない?」

 アキ君には聞こえないように、こそっとささやく。


 私は首を横に振った。

“平気。
 ここにいるアキ君は、私の彼だったアキ君じゃないもの。
 それに言ったでしょ。
 自分の気持ちにけじめをつけるんだって”


「・・・そうだったね」

 お兄ちゃんは私の頭を軽くポンポンとたたいて、今度こそ部屋を出た。
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