声にできない“アイシテル”
 自分のことなのに、分からない。

 知っているはずなのに、思い出せない。


 彼は不安でたまらないのだ。



 アキ君のつらそうな顔を見て、私の胸が苦しくなる。

 この人は私の彼氏ではないけれど、放っておけない。



 私は知っている。

 彼がどれほど素敵な人であったのかを。


 私の体が、心が、それを覚えている。


 自分の正体は明かせないけれど。

 励ますくらいは出来る。

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