声にできない“アイシテル”
 しばらくして、同じタイミングで顔を上げた私たち。

 なんとなくお互い笑顔になる。


 だけど突然、アキ君の表情が一変。

「つかぬ事をお訊きしますが」

 真剣なまなざし。


―――どうしたのかな?

 彼の様子が変わった理由が分からず、首をかしげる私。


 するとアキ君は私の方にちょっと身を乗り出した。

「大野さんは、僕のことを知っているのではないですか?」


―――え?

 思わず、アキ君を凝視してしまった。


―――そんな素振りをしたっけ?!

 ざっと自分の行動を思い返したけど、見当がつかない。



―――私のこと、試してるだけ?


 まさか、とは思いつつもドキドキと心臓が早打つ。


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