声にできない“アイシテル”
―――そっかぁ。
   アキ君はそれを確かめたくて、私にもう一度会いたかったんだ。 
   
 
 ウソをつくのは心苦しいけど、正直には話せない。

 私は彼に謝った。

“個人的には桜井さんの事を知りません。
 お役に立てなくて、ごめんなさい”

 ペコリ、と頭を下げる。


「いえ、そんなっ。
 こちらの勝手な思い込みだったんです。
 謝らないでください」

 アキ君は心底申し訳ない顔で、私の頭を上げさせる。

「直接僕のことを知らなくても、大野さんに会えて助かりました。
 何しろ自分で自分のことが分からないのですから。
 あなたが僕の顔を見知っていたおかげで、身元が分かったんです。
 それだけで、十分感謝しています」


 すがすがしく笑う彼のことを、嬉しさと切なさが混じった思いで見つめた。
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