声にできない“アイシテル”
 いつものように玄関を開けると、仕事に行っているはずの父親の靴が玄関にある。


 早退でもしてきたのかと思って、大して気にも留めず家に上がった。


「ただいまぁ」

 声をかけても返事がない。



「お母さん?」

 専業主婦の母親は、俺が帰ってくる時間にはいつもリビングにいるはずなのに。

 この日はリビングどころか、キッチンにも洗面所にもいない。


 玄関の戸に鍵はかかっていなかったから、出かけたはずはない。

 

 それにしても、なんだか家の中の様子がおかしい。

 静か過ぎる家。 



 父親の靴があるのに、人の気配がしないのはなぜだろうか。



「どうしたんだろう?」

 変に思いながらも、荷物を置くために自分に部屋に向かった。







 両親の寝室の前を通ると、違和感が。


「あれ?」


 几帳面な両親は扉を開けたままにしない。


 なのに、寝室のドアが細く開いている。
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