声にできない“アイシテル”
 アキ君が乗る飛行機の搭乗アナウンスが、空港内に流れる。

「そろそろか・・・。
 それではお2人とも、お元気で」

「桜井さんも」

 アキ君とお兄ちゃんが握手を交わす。


 次に私へと手を差し出すアキ君。  

「僕のワガママに付き合ってくださって、ありがとうございました」
 

“どういたしまして”

 アキ君の手をそっと握り返す。


 これでもう、彼に触れる機会は二度とない。

 そう思うと、私の中に往生際の悪さが一瞬生まれる。


―――・・・決めたでしょ。
   アキ君とはきちんとサヨナラするんだって。


 いつまでもすがってしまいそうな温もりが怖くて、自分から手を解いた。


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