声にできない“アイシテル”
「なに?」

 少し不機嫌に返事をする。


 楽しくしゃべっていた所に割り込んでくるといった、デリカシーのないところが女子の嫌いなところだ。



「あ、あの。
 桜井君のはちまき、私が用意してもいいかな?」

 顔を赤らめながら、恥ずかしそうに今井さんが申し出る。


―――ふぅ、またか。

 俺は心の中でため息。

 何でだか知らないけど、俺にはちまきを用意するという女子が後を絶たない。



 小山いわく、『俺へのアプローチ』らしい。

 これがここ最近、女子達が落ち着かない理由だ。



 事あるごとに声をかけられ、いちいち呼び止められる。

 同級生以外の女子からもだ。


 俺からすると、迷惑以外の何物でもない。




「悪いけど、俺の分はもう用意してあるから」

 話は済んだとばかりに切り上げると


「えと、じゃぁ。
 私のはちまきと交換してくれる?」

 更に顔を赤くして今井さんが言った。

< 41 / 558 >

この作品をシェア

pagetop