声にできない“アイシテル”
「えっ?」

 びっくりしたお兄ちゃんは立ち止まってしまった。

「それはどういうこと?
 観光旅行ってことかな?」


 私は首を横に振る。

“私はもう、イギリスにいられない。
 記憶を取り戻したアキ君が、またやってくるかもしれないから”


 アキ君にサヨナラすると決めた時から考えていた。

 今度こそ、彼と顔を会わせるわけにはいかない。


“私一人でやっていけるから、余計な面倒はかけないよ。
 あ、でも、住むところが見つかるまでは、お邪魔するかもしれないけど”

 
「そんなことは気にしなくていいって。
 分かった、一緒に行こう」

 お兄ちゃんが優しく笑う。






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