声にできない“アイシテル”
“わがまま言ってごめんね”

「家の心配はしなくていいよ。
 俺が住んでるアパートは結構広くってさ。
 1人増えたくらいは問題ないし」

“それでも、ずっとそこにいるわけにはいかないよ。
 お兄ちゃんの彼女、呼べないでしょ?”


 私は冗談交じりに言ったんだけど。

 お兄ちゃんの顔は笑ってなかった。


「ずっと、彼女はいないんだ・・・」


 まっすぐに私を見るお兄ちゃんの目。


―――ん、何?


 尋ねようとしたんだけど、お兄ちゃんは歩き出してしまったから訊けなかった。

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