声にできない“アイシテル”
「日本で何かつらいことがあったんだなってことは分かってた。
 だって、チカちゃんの笑顔って、どこか寂しそうだったから」


 きちんと笑っているつもりでも、笑えてなかった。

 自分でも、なんとなく分かっていた。


 だけど、心配かけたくないから。

 平気な顔して、過ごしてきた。


―――気の回る優子さんは、そんな私に気がついていたんだ。


 なのに、尋ねたりしないで、そっと見守ってくれていた。

 その優しさに、目が潤む。


 
「でも、少しずつ本気の笑顔になってきてさ。
 私、嬉しかったんだ」

 ぐすん、と鼻をすすった優子さんがエヘヘと笑う。

「もう二度と、悲しそうに笑うチカちゃんになって欲しくないの。
 アメリカで幸せになるのよ」

 最後にギュッと抱きしめてから、優子さんは私から離れた。


“ありがとうございます。
 私、優子さんに会えてよかった”


 そう言ったら、また泣き出してしまった。

「やだ、もう。
 笑ってお別れしたいのに。
 ・・・よぉし、今夜は目一杯食べて、飲むわよ~」


 私たちは眠りにつく直前まで、たくさん話をした。

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