声にできない“アイシテル”
―――別に、急いで訊くことでもないか。
   手術が終われば、解決するはずだ。


 分からない事だらけで不安もあるけど。

 お守りのおかげか、精神的に落ち着いている。


 上着のポケットに入れた指輪にそっと触れる。

―――大野さん。
   不思議な人だったなぁ。


 初めて会ったのに、どこか懐かしさを覚えた。

 穏やかな安らぎを与えてくれた。


―――彼女が俺と結婚してくれたらいいのに。


 そうすれば、俺はずっと笑顔でいられそうな気がする。



―――ははっ、それは無理か。
   

 彼女はすでに『最高の出会いをした』と言った。
 
 そこに割り込むことは出来ない。



―――退院したら、改めてお礼に行こう。
   そして、友達になってもらおう。


 そのくらいなら、彼女の心を捉えた彼にも許してもらえるだろう。


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