声にできない“アイシテル”
―――なんでわざわざ交換しなくちゃならないんだ?


 好きな人のはちまきを締めて頑張りたい、という乙女心は俺には理解不能だ。


 はちまきとか関係なく、頑張ればいいじゃん。



 みんながいる前で冷たく言い返すのも気が引けるけど。

 でも、ヘタなことを言ってつけあがられてもイヤだから。



「そういう申し出は断わってるんだ」

 感情もなくぽつりと言った。


 すると今井さんはキュッと眉を寄せて、

「そっか。
 話の途中に邪魔してごめんね」


 早口に言って、彼女は教室を出ていった。





「相変わらず、桜井のモテっぷりはすげえな」

 近くに立っていた滝沢が感心している。


「嬉しくないんだけど?」

 嫌そうに言う俺。



「そんなセリフ、一度言ってみたいよな」

「モテる男はつらいねぇ」


 周りの友達が口々に言ってくる。



―――本気で嬉しくないんだけどな。


 心の中で、また、ため息を洩らした。
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