声にできない“アイシテル”
 叔父さんは近くにあったイスに腰を下ろし、話しかけてくる。

「お前が急にイギリスに行ったと知って、驚いたんだぞ。
 気晴らしの小旅行か?」

 わざとらしく話をはぐらかそうとするのが分かった。


 だけど、俺は正直に話す。

 これ以上、2人に邪魔されないようにという宣言の意味も込めて。


「チカに会いに行った」




 叔父さんと叔母さんがハッと息を飲んだ。

「・・・あの子のこと、あきらめたんじゃなかったの?!」

 叔母さんが独り言のように漏らす。

 叔父さんの瞳に戸惑いの色が強く浮かぶ。

 
 この2年間、チカのことを口に出さずに黙々と仕事をしてきた俺を見て。

 叔父さん達は俺がチカのことを『過去の存在』にしてしまったんだと、思ったらしい。


 あいにく、チカに対する俺の気持ちは2年ごときじゃ消えやしない。

 むしろ、よけいに逢いたい想いが募った2年間だった。



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