声にできない“アイシテル”
 叔父さんも叔母さんも、困ったように目を見合わせている。


「何度反対しても、俺の気持ちは変わらないよ」

 穏やかに。

 そして力強く、自分の想いを口にする。


「だが、あの子は口が利けないじゃないか。
 晃の気持ちも分からなくもないが、会社のためには・・・」


 今までに何度となく聞いてきたこのセリフ。

 会社を守るためには仕方がないのだと、2人も自分たちに言い聞かせてきたのだろう。

 現実的に考えると、『俺の養父と養母』と言う前に、『社長と副社長』でいなければならなかった。



 だけど、今は2年前とは状況が少し違っている。

「俺にとって、もちろんチカが一番大事だけど。
 それと同じくらい、会社も大切に思ってる。
 まだはっきりとは言えないけど、すべてが丸く収まる方法が見つかるかもしれないんだ。
 だから、もう少し時間が欲しい」

 強い意思を込めて言い切った俺に、2人は何も言い返さなかった。


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