声にできない“アイシテル”

蘇る記憶

 意識さえ戻れば病院にいる必要はない。

 診察を済ませた後、叔父さんたちと一緒に会社に向った。


「もうしばらく休めばいいのに」

 心配そうな顔をしている叔母さんに小さく笑いかける。

「ちょっとした打ち合わせをするだけだよ。
 終わったらすぐに帰るから」

 そう言って車を降りた。





 空いている会議室に横山を呼び出す。

「専務!
 お体は?」

 入ってくるなり、横山は俺の頭の先からつま先まで不安そうに見つめる。

「大丈夫だ。
 俺がいない間に何か問題はあったか?」

「いえ、まったく」

「それならいい」

 俺達は手近なイスに腰を下ろした。



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