声にできない“アイシテル”
 俺は背もたれに寄りかかり、大きく伸びをする。

「まぁ、すんなりとは行かせてくれないかもしれないなぁ」


 病院では何も口出ししてこなかったけど、それはけして“俺達のことを認めたから”ではない。


「だが、俺が作ったシステムがあれば、仕事に関して文句はないはずだ。
 チカの問題点に関しては、もう少し時間がかかるかもしれない。
 具体的な話が挙がれば、社長たちもある程度は納得するだろうが」

「その件で、専務にメールが届いてましたよ」


 横山がパソコンを開き、見せてくれる。


 メールの差出人はアメリカの医療研究チームだった。

 ここ数年、俺はある目的のために資金援助を行っている。


 細かい英字がびっちりと並んだその文章を、一文字も見落とすことのないように注意深く読む。


 最後まで目を通した俺の顔が緩んだ。

「どうやら、チカの件は思ったより早く解決できそうだ。
 そうとなれば、すぐにでもイギリスに行かないと」

「では、飛行機のチケットを手配しておきます」

「頼む。
 出来れば2、3日中には出発したい」

「かしこまりました」

 横山は俺に頭を下げて、会議室を出て行った。


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