声にできない“アイシテル”
 家に戻り、再び出発するための準備をする。


 この前使ったスーツケースの中身を、新しいものと入れ替えた。


「あっ。
 使ったジャケット、クリーニングに出さないと」


 帰国の日に来ていたジャケットは、イスの背にかけたままだ。


 それを手にとって、ポケットに余計なものが入っていないか確認する。

 すると、丁寧に何かを包んだハンカチが出てきた。


「何だ、これ」


 覚えはないが、この上着も、このハンカチも俺のもの。

 不思議に思いながら、ゆっくりと包みを開く。




「・・・これは?!」


 ハンカチの中から出てきたのは指輪。

 付き合って初めてのチカの誕生日に贈った、あの指輪だ。



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