声にできない“アイシテル”
―――どうして、俺が持ってるんだ?!


 俺の体が震えだし、頭の中心がガンガンと鳴り響く。

 激しく頭が痛い。


「う、ああ・・・」

 その場にうずくまる俺に、記憶の断片が渦を巻いて襲いかかってきた。


 イギリス。

 バス。

 爆発。

 病院。


 そして・・・チカ。


 目の前に火花が散り、イギリスでのことをすべて思い出した。


「俺、チカに会ったんだ・・・」


 3日間でいろいろな話をした。


 俺の冗談に、楽しそうに笑っていたチカ。

 自分の勉強の成果を、ちょっとだけ誇らしげに教えてくれたチカ。


 すぐ目の前にチカがいたのに、掴まえなかった。

 抱きしめなかった。


「俺、何やってんだよ・・・」


 記憶喪失というアクシデントとはいえ、悔しくてたまらない。

 グッと指輪を握り締める。
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