声にできない“アイシテル”
 彼女がこれを俺に渡したということは、『もう、俺の傍にはいられない』と伝えたかったのだろう。

 だけど、そんなのは絶対にチカの本心じゃないはず。


 桜井グループや従業員。

 叔父さんと叔母さん。

 そして俺の将来のことを考えて、身を引いたんだ。


 だから、あんなに寂しそうな笑顔で俺を見送ったんだ。





 この指輪を俺が受け取ったことで、チカは俺との関係を終わらせたと思ってる。


 でも、あの時の俺は“俺”じゃない。

 桜井 晃として、チカとのことは何一つ終わってない。




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