声にできない“アイシテル”
「アメリカ!?」 

 思わず立ち上がってしまった。


「急にアメリカに行くんだって言い出したんです。
 あと2、3年はイギリスで勉強したいって言ってたのに」

「そうですか・・・」

 力が抜けた俺はストンと腰を下ろす。


―――なんで、そんな所に行ったんだ?


 まったくの予想外の展開に思考が止まりそうになるが、必死に冷静さを取り戻す。

「その後、チカからの連絡はありますか?」

「メールはよく送ってきますね。
 手紙も時々きてますよ」


 テーブル横にある引き出しから何通かの封筒を出してくれた。

 受け取ってみると、どの封筒にも差出人の住所がない。


―――やっぱりな・・・。


 記憶が戻った俺がイギリスにやってくると悟って、チカは引越しをしたのだろう。

 そして、万が一俺がここを突き止めても居場所が分からないように、住所は書くこともなく。

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