声にできない“アイシテル”
「絵本の勉強ということもあったでしょうが。
きっかけは俺と別れるように、養母に言われたからです」
「そうだったの。
だから、あの子は悲しい笑顔しか出来なかったのね」
上田さんは当時のチカを思い出しているのだろう。
瞳に浮かぶ光が見守るように優しく、そして寂しそうに遠くを見る。
「チカには本当に悪いことをした。
だからこそ、どうにか掴まえて謝りたいんです。
そして、やり直したいんです。
もし俺がここに来たことが知られたら、また居場所を変えるかもしれない」
「そういうことでしたか」
俺を見る視線に不審の色が消えた。
「勝手なお願いをして申し訳ありません。
でも、もう二度とチカを手放すわけにはいかないんです。
先日イギリスに来た時、すぐ目の前にチカがいたのに抱きしめることも、謝ることも出来なかった。
まぁ、爆発のショックで記憶を失っていたので仕方がないのかもしれませんがね」
「それは、路線バスの自爆テロのことでしょうか?」
じっと俺を見て、確かめるような口調の上田さん。
「はい。
運良く命は助かりましたが、怪我をしていたのでしばらく入院してました」
「××病院に?」
「そうですけど」
声まで硬い表情だった上田さんが、ふっと微笑んだ。
きっかけは俺と別れるように、養母に言われたからです」
「そうだったの。
だから、あの子は悲しい笑顔しか出来なかったのね」
上田さんは当時のチカを思い出しているのだろう。
瞳に浮かぶ光が見守るように優しく、そして寂しそうに遠くを見る。
「チカには本当に悪いことをした。
だからこそ、どうにか掴まえて謝りたいんです。
そして、やり直したいんです。
もし俺がここに来たことが知られたら、また居場所を変えるかもしれない」
「そういうことでしたか」
俺を見る視線に不審の色が消えた。
「勝手なお願いをして申し訳ありません。
でも、もう二度とチカを手放すわけにはいかないんです。
先日イギリスに来た時、すぐ目の前にチカがいたのに抱きしめることも、謝ることも出来なかった。
まぁ、爆発のショックで記憶を失っていたので仕方がないのかもしれませんがね」
「それは、路線バスの自爆テロのことでしょうか?」
じっと俺を見て、確かめるような口調の上田さん。
「はい。
運良く命は助かりましたが、怪我をしていたのでしばらく入院してました」
「××病院に?」
「そうですけど」
声まで硬い表情だった上田さんが、ふっと微笑んだ。