声にできない“アイシテル”
“ただでさえ、住まわせてもらってあれこれ迷惑かけているのに。
 本当にごめんね”


 シュンと落ち込む私の頭を、お兄ちゃんがそっとなでる。

「迷惑だなんて思ってないから、気にすることないよ。
 仕事よりチカちゃんのほうが大事なんだから」

 やんわりとお兄ちゃんが微笑む。


―――あ、まただ。


 お兄ちゃんは時々こういう目をする。


 まっすぐに、真剣に。

 私をじっと見つめる。


 その視線には『幼馴染に対する優しさ』以上のものを感じるのだ。

 どうしてそんな表情をするのか訊いてみたいけど、なんとなく訊くことができない。


 だから私は違う話題を選ぶ。

“お兄ちゃん、お医者さんなのに私のことは診察できないの?
 ここじゃ道具がないから?”

「んー、出来ないこともないけど。
 内科は専門じゃないから」

 苦笑するお兄ちゃん。

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