声にできない“アイシテル”
「最後の学校行事になるんだなぁ」

 横に立つ小山がしみじみ言う。


「だったらリレーにエントリーすればよかったんじゃねぇの?
 いい思い出になっただろうよ」

「・・・足は速くないんだよ」


 こんな話をしているうちに、出入り口の混雑が落ち着いた。



 列の最後尾に着くと、人の波に埋もれている見覚えのある黒髪のあの子。


―――ちっちゃいなぁ。
   大丈夫か?


 そう思って見ていると、前を歩くあの子がふいに振向いた。


 小山がそれに気付き、手を振る。

 あの子は人の流れからはずれて、俺達が追いつくのを待っていた。


 合流すると、隣りには昨日見た友達はいなくて彼女1人だった。


 考えてみると、俺がその場にいる必要はなかったんだけど。

 小山もその子も、俺がここにいる事に何の不満もなかったみたいだし。 


 それに他の女子と違って、この子の傍にいるのはイヤじゃないし。




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