声にできない“アイシテル”
 そんな私を見て、お兄ちゃんが小さく笑う。

「返事は急がなくていいんだ。
 突然のことで、心の整理が出来ないだろうし。
 それにまだ、桜井さんの事は完全に吹っ切れてないでしょ?」


“え・・・、あ・・・”

 ギクリ、とする私。


 アキ君のことは気にしないようにしているんだけど。

 やっぱり、まだ心のどこかで引きずっている。



「今はただ、俺の気持ちを知って欲しかっただけなんだ。
 そして、出来ることなら前向きに考えて」


“・・・時間をちょうだい”

 
 混乱が大きすぎて。

 一言、そう伝えるのがやっとだった。
 



「そうだよね。
 チカちゃんが答えを出すまで待ってるから。
 よく考えて、正直な気持ちを聞かせて」

“うん・・・”

「さてと、俺はレポートの続きをするよ。
 チカちゃんは念のために、今日もおとなしくしてるんだよ」

 お兄ちゃんは腕を伸ばして、私の頭をそっとなでる。


 すっかりいつもの顔に戻ったお兄ちゃんを残して、私は自分の部屋に戻った。
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