声にできない“アイシテル”
 その日の夕食時に話を切り出した。


“あのね・・・。
 じっくり考えたんだけどね。
 えと・・・、お兄ちゃんと一緒にいてもいいかなって思えるの”


 かしこまってしまうと照れちゃうから。

 何気ない振りをして、そう伝えた。


 突然の話で、パンに手を伸ばしていたお兄ちゃんの手が止まった。

「チカちゃん、それって・・・?」

 びっくりして、何度もまばたきをしている。


 そんな様子を見て、私は少し笑って頭を下げた。

“結婚とかは・・・まだ、考えられないけど。
 少しずつ、進んでいけると思うの。
 こんな私でよかったら、よろしくお願いします”


 するとお兄ちゃんはかしこまって、膝の上に手を置く。

「い、いや、そんな。
 俺のほうこそ、よろしくお願いします」


 2人で頭を下げて。

 そして、2人で笑った。



「はぁ、よかった。
 これで少しはホッとしたよ」

 お兄ちゃんがイスの背にゆったりともたれた。

「ゆっくりでいいから、一緒に前に進もうね」


 私はちょっと顔を赤くして、うなずいた。


―――いつの日か、お兄ちゃんが私の旦那さんになる・・・。
   なんか変な感じだけど、きっと幸せになれるよね。
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