声にできない“アイシテル”
「チカちゃん、今日は一人?
 友達は?」

 小山が尋ねると、彼女は手を口に当てて、コホンコホンと咳き込むマネをした。

「あ、風邪か。
 昨日、急に寒くなったもんね」


 さすが、小さい頃から仲のいいイトコ同士だ。

 わずかな仕草で通じている。


―――それにしても・・・。



 俺の視線に小山も気がついたらしい。


「あのさ、チカちゃん。
 それ、ずいぶん大きくない?」


 そうなのだ。

 他の女子のぽんぽんは自分の顔と同じくらいなのに、彼女が手にしているのはみんなよりも3倍は大きい。 


 ニコッと笑った彼女は、持っていたメモにサラサラと書き付ける。


“私は声を出して応援できないから。
 その代わりに、この大きなポンポンで応援するの。
 目立つでしょ”



 そうして、またニコッと笑う。


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