声にできない“アイシテル”
 でも、お兄ちゃんは私のために大変なお医者さんになって。
 
 私のために人工声帯の研究をしてくれた。


 手術は怖いけど。

 お兄ちゃんがこれまでに費やした時間や努力、そしてお兄ちゃんの気持ちに応えるためにも、受けるべきだろう。



“・・・そうだね。
 手術、しようかな”


「そう言ってくれると思って、いつでも手術室は確保してあるんだ。
 さっそく明日は?」

 お兄ちゃんが嬉しそうな顔をして、テーブルの上に身を乗り出す。


 私はびっくりして、目をぱちくり。

“あ、明日?!
 それはなんでも急すぎるよ!
 無理だって”


 たった今手術の話を聞かされたって言うのに。

 心の準備なんて、何も出来てない。



 今度の手術は声を奪うものじゃなくて、声を取り戻すためのもの。

 明るい希望の持てる手術だ。


 だけど、自分の体にメスが入るのはやっぱり恐怖がある。 




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