声にできない“アイシテル”
「うわぁっ!!」

 大声とともに飛び起きる俺。

 心臓が痛いくらいに脈打ち、全身にじっとりとイヤな汗が滲んでいる。


「夢か・・・」

 額の汗をぬぐい、ほう、と息をつく。


「やけにリアルな夢だったな」


 目が覚めた今も鮮明に残る光景。


―――こんなの、あるはずないさ。

 
 チカは俺と結婚するんだ。

 そのためにこの2年間、手を尽くしてきた。


 その努力がもうすぐ報われそうだという時に、なんて後味の悪い夢を見てしまったのだろう。


「きっと逆夢だ・・・。
 ははっ、そうだよ。
 これは逆夢なんだ」


 夜明け前の一室に、乾いた笑いが静かに響いた。
 


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