声にできない“アイシテル”
「今日のリハビリは終わった?」

 扉が開いて、一人の男性が入ってきた。

「あ、お兄ちゃ・・・、じゃなかった。
 トオルさん。
 リハビリはさっき終わったよ」

 あわてて言いなおした私に、彼は笑いを隠さない。

「あははっ。
 まだクセが抜けないみたいだね」

「だってこれまでずっと“お兄ちゃん”だったんだもん。
 なかなか名前で呼べないよ」

「そうだね。
 ま、すんなり呼んでくれるようになるまで気長に待ってるよ」

 にっこり微笑んで、私の頭をなでる。


 そう。

 私にはこの人がいる。


 いい加減“アキ君”から抜け出さなくちゃ。



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