声にできない“アイシテル”
「たぶん、すぐ慣れると思うから。
 それより、私はいつ退院できるのかな?」

「ん?」

「体はすっかり元気だもん。
 おかげで毎日退屈なの」


 大きく腕を振り回す私を見て、トオルさんはクスリと笑う。

「そろそろ言い出す頃だと思ったよ。
 さっき聞いたら、5日後に退院だって」

「本当?
 よかったぁ」


―――あれ?

 笑顔の私とは反対に、トオルさんは真面目な顔だ。


「・・・ねぇ、チカちゃん」

 トオルさんの声が少し硬い。

「何?」

「退院したら、家に帰る前に指輪を買いに行こうか」


 彼は私の目をまっすぐに見て言った。




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