声にできない“アイシテル”
「指・・・輪?」

 戸惑う私の左手をトオルさんが取る。

「うん。
 ここにはめる指輪だよ」

 そう言って、薬指に触れた。


「気が早いかもしれないけど、退院祝いもかねて。
 受け取ってくれるよね?」


 私はびっくりしてしまって、声が出ない。

―――それって、要はプロポーズってことだよね?


 確かに急すぎる気もするけど。

 ぜんぜん考えていなかったことじゃない。

 いつかはそうなることも踏まえて、トオルさんと付き合うことを決めたのだ。



 一つ息を吸って微笑む。

「もちろん。
 ね、お医者さんってお給料がいいんでしょ。
 お給料3か月分の指輪ってすごい豪華だろうなぁ。
 楽しみ」


「これまで頑張って働いてきたからね。
 それなりの品物を買って上げられるから、安心して」

 はしゃぐ私にトオルさんは苦笑いした。



< 484 / 558 >

この作品をシェア

pagetop