声にできない“アイシテル”
―――あれ?
   何かマズい事、言ったか?

「山下さん?」


 名前を呼ばれて、はっと我に返る山下さん。

「ああ、すいません。
 桜井さんは離れていた間も、チカちゃんのことを好きだったわけですね」


「そうです」

 はっきりと力強く答えた。


 それを聞いて、山下さんが困ったように微笑む。

「あなたの言葉にウソはないようだ」


「もちろんですよ」

 きっぱり言い切る。


 すると山下さんは口元に手を当てて、なにやら考え出した。




 沈黙が訪れる。

 山下さんは時々眉を寄せて、難しい顔になる。




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