声にできない“アイシテル”
 俺がチカの話をしてから、ずっと彼の様子がおかしい。

―――いったい、どうしたって言うんだ?


 とりあえず、山下さん様子を見守る。


 そんな彼を見ながら、俺は訊きたい事があったのを思い出した。

「あの、チカの居場所を知りませんか?」


「え?」

 声をかけられ、考え込んでいた山下さんが意識を取り戻す。

「俺、少し前にイギリスへ行っていたんです。
 そこでチカに会いました。
 その時、山下さんにも会いましたよね?」

 彼の瞳をじっと見る。


 すると、山下さんは短く息を吐いた。
 
「…記憶が戻ったんですね」


 なんともいえない表情となる山下さん。

 そして、また考え込んでしまった。




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