声にできない“アイシテル”
「チカちゃんは俺と付き合っていくことを決めてくれました」


―――そんな…。

 俺はがっくりと肩を落とした。


 しかし、本来ならば勝者のはずである山下さんも肩を落とす。

「ただ、今でも彼女の心の中には桜井さんがいるんですよ」


 淡々と告げる口調。

 それは俺に対する悔しさをどうにか隠そうとしているのがよく分かる。



 山下さんの言葉を聞いて、俺の目にうっすらと涙が浮かんだ。

―――良かった。
   俺は完全に捨てられたわけじゃないんだ。


 だけど、それが分かったところで状況は自分の思うようにはならない。


 チカは心がまだ不安定な状態とは言え、山下さんと付き合う意志を示している。

 俺はどうしたらいいんだろう。


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