声にできない“アイシテル”
「今から緊張していたら身がが持ちませんよ。
 まぁ、お気持ちはよく分かりますが」

 山下さんがやんわりと目を細める。


 が、すぐに真剣なまなざしに戻った。

「桜井さんにお願いがあります」

「なんですか?」

「チカちゃんの気持ちを惑わせないためにも、退院する日まで彼女に会わないでください。
 もちろん、俺も用がない限りは会いません」

 
「分かりました」

「それと、どちらが選ばれても恨むのはナシにしましょうね」

 
 山下さんは卑怯な手を使ったわけでもないし。

 それどころか『フェアにいこう』と、チカの居場所を教えてくれた。

 彼を恨むのはおかしな話だ。


 そして。

 たとえチカが俺を選ばなかったとしても、チカを恨む権利はない。



 山下さんの提案に大きくうなずいた。




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