声にできない“アイシテル”
15章 アイシテル

決断の日 SIDE:チカ

 いよいよ退院できる日が来た。


 経過を見るために、月に一度は診察を受けなければいけないのだけれど。

「彼氏が専門医だから、何にも心配ないね」

 リハビリの先生にそう言われて、少し照れてしまう。


 入院してからずっと、時間さえあれば私のそばにいてくれたトオルさん。

 その様子は病院中の人が知っていて。

 先生達どころか、他の患者さんにも『仲がいいね』と言われてしまうほど。


 その彼が、最近では朝に顔を出すだけとなっていた。


「どうしたんだろう。
 お仕事が忙しいのかな?」

 自分のパジャマやタオルをバッグにしまいながらつぶやく。


 昨日、挨拶だけしに来た彼の顔が少し暗かったように思う。

 疲れているのかと思ったけど。

 どちらかと言うと、何か考え込んで、思いつめているようにも見える。


―――新しい研究が、うまく進んでないとか?

 トオルさんの仕事は特殊だから、なかなか分かってあげられない。



 でも、これから先はずっと一緒なのだから。

 少しくらいは彼の支えにならなくてはいけないだろう。

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