声にできない“アイシテル”
―――ずっと、私を好きでいてくれたの…? 
   本当に?

 恐る恐る彼の背中に腕をまわすと、アキ君の腕に力が入って更に抱き寄せられる。

「俺の気持ち、分かるだろ?」


 そのしぐさはまるで、『チカが好きだよ』って言ってるみたい。

 言葉がなくても、アキ君の気持ちが伝わってくる。



 優しくて、力強い彼の抱擁。

 温かくて、穏やかな彼のぬくもり。


 昔とぜんぜん変わっていない。

 離れていた2年間なんて無かったかのように、私の体も心も、彼のすべてを覚えている。



 アキ君は私の目をじっと覗き込み、フワリと微笑んだ。

「前に言っただろ?
 チカがいないと俺は幸せになれないんだって。
 忘れちゃった?」


 彼の腕の中で、私は静かに首を横に振った。

―――覚えてるよ。
   アキ君との思い出は、みんな覚えてるよ。


 彼に愛されていた時間で一杯だった素敵な思い出を、忘れるはずなんてない。



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