声にできない“アイシテル”
 今のところ、友人達のありがたい防護壁のおかげで問題なく競技を見学。

 俺は不機嫌にもならず、リレーの開始を待っていた。



 グランドでは消えた白線を直しているので、始まるまでにはもう少しかかりそうだ。


 のんびりその様子を見ていたら、1人の教師が集まった選手達の所に駆け寄り、何かを話しかけた。

 少しざわついているのが遠目にも分かる。


「何かあったのかな?」

 隣に座る小山が心配そうに見ている。


 そこへ。


「桜井!
 桜井 晃はいるかっ!?」

 担任が走ってくる。


「ここです」

 俺は右手を上げた。

―――何だ?



 担任は乱れた息を整える事もなく

「この後のリレーの出ろ!」

 と、言ったのだ。


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